【第3回:「青年部幹部会」結集へ向けて(下)】

京香「それに,こんなに強引に誘うだけの価値が,その会合にあるっていう自信がどこにあるんですか? 誘うからには,魅力のある会合じゃなきゃいけないと思わないんですか?」
妙子「わたし自身は,絶対にひとりひとりにとってプラスになる会合だと思ってる」
京香「いつもと同じことやるのに?」
妙子「そりゃあ,形式は同じかもしれないけど……」
京香「一体どういう思いで誘ってるんですか? 妙子さんだって,結局はただ座ってるだけしょ.連れてきて,あとは『あなた次第よ』みたいな.よくそれで,絶対に良いから来いなんて,無責任なこと言えますね」
妙子「だから,先生のお話を聞けば,何かきっとつかめるだろうと思って.そのためには,まず参加することが戦いじゃない」
京香「行けばどうにかなる,なんて考え,おかしいんじゃないですか.そんな,魔法じゃないんだから.それにもっと,行きたくない人の立場にたって,考えてみて下さいよ,幹部の側の論理ばかりじゃなくて.行きたくない人の心を考えてみたことありますか」
妙子「わかろうとしているつもりだけど……」
京香「だったら,そんなこと言わないでしょ.『わかろう』としているんじゃなくて,『わからせよう』としか思ってないんですよ」
妙子「……」
京香「第一,わたしのこと別に深く考えてないでしょう?」
妙子「そんなことない,そんなこと絶対にないよ.まだまだわかってあげられてないかもしれないけど,京香ちゃんと一緒に幸せになりたいって思うからこそ,青年幹にと」
京香「本当にわたしのこと思ってるって言うんだったら,会合に誘うことなんかより,もっとやることあるんじゃないですか.先生とかいう前に,妙子さんとわたしの人間関係をつくんなきゃいけないと思いません? 表面的な話しかしたことないじゃないですか.わたしのこと,なんにも知らないでしょ? それに,妙子さんからは,『先生はね』とか,そういう話しか聞いたことなくて,妙子さん自身の肉声は全然聞いたことないですよ.そんな人に『思ってるのよ』とか言われても,信じられますか? 会合の時とかだけ来て,きれいごと並べて」
妙子「確かにね.そう思われても仕方ないわ」
京香「だから,わたしは結局,妙子さんや他の幹部の人たちが自己満足するためだけの,結集要員でしかないんだろうな,なんだかバカにされてるなあ,と思うわけですよ」
妙子「そんなことないってば」
京香「こっちの立場で考えたことないから,わかんないでしょうけど,そういうのって,敏感に伝わってきてるんですよ.わからせようとしかしていない,って言ったのはそういうことです」
妙子「そっか,ごめんね,わたしがいたらなくて.わかった,わたしもう一度いろいろ考えてみるから.とりあえず今日のところは,入場券だけもらってくれるかな」
京香「行きません!」

その晩,結集状況を確認する区の打ち合わせで,他の幹部を前に,妙子は今日の報告を.結論は「京香ちゃんが言うのはもっともだけど,あんなふうにしか思えないなんて,やっぱりかわいそう.見方を変えてあげなきゃ.もっと京香ちゃんのこと祈っていこう」でした.